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水のくくるをめぐる

取材

こんこんと湧く、修験者の喉を潤す“桂清水”

ライター︰下田知幸

「水の町、郡上」。

白山麓のお膝元のこの地域には、山水、井戸水が町中の暮らしに溢れている。川では川であそぶ「川がき(川であそぶ子供達)」や釣り師、ラフティングやシャワークライミングといった、川と人の距離が近い光景が多くあり、「親水性」が高い町として、水の町といわれている。


そんな郡上市は、かつて白山信仰の美濃禅定道として、長滝白山神社以北を神域とし、登拝が行われていた。白山信仰登拝ルートの最奥地の集落である石徹白地域を最後に本格的に入山準備を行い、人の暮らす町並みを抜け自然の中に入っていく。

その石徹白地域の手前の「桧峠」は、今では道が整備され車で通行することが可能だが、整備される前は険しい峠を越えて、1日程度かけて石徹白地域へ向かって歩いていた。

そんな、険しい道のりの途中に疲れを癒す恵みの湧水がこんこんと湧き出る。
「桂清水」と呼ばれる桂の木の下を流れる、今でも生活の水として利用されている湧水だ。

石徹白までの道沿いに小さく看板が立っている桂清水。
桂というのは「桂の木」から由来するもので、水場に訪れ山を見上げると杉林の中に枝分かれした大きなふとい木が数本経っており、その下が水の通り道となっている。

桂の根元から湧き出る桂清水。その様子は木によって地上に吸い上げられた恵みそのもので、そこから水が生まれていることがわかる。

桂の木は水を好む木の代表格で、水が豊富な場所にしか生息できない。ここの水場は常に安定した水量が湧き出ており、桂にとっても好条件なきれいで豊かな水の場所である。

ぜひ、石徹白を訪れる際には、一度車をとめて水に触れて欲しい。

険しい峠を登った修験者達にとって恵みの水であったこの水は、今も枯れることなく人々の喉を潤し続けている。その長い時間を湧き続ける大地の恵みに対して生まれる感謝の念は、白山信仰に根付く、人の自然への関わり方を示している。

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