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伝のくくるをめぐる

取材

公開講座レポート「白山曼荼羅から読み解く美濃禅定道」

ライター︰秋屋美桜

白山信仰について知識を深めるため、「白鳥観光ガイドの会」により今年度から開催される講座に参加した。

今年度は「白山曼荼羅から読み解く美濃禅定道」というテーマで開催され、文献が少なく謎の多い白山信仰の謎を紐解くヒントである「白山曼荼羅(はくさんまんだら)」の見方を学ぶというものでした。


少し難しそうなタイトルに不安を抱きつつも、自分が住む土地ゆかりの信仰や文化を探ってみたいと思い参加した今回の講座。第1回目の開催にもかかわらず、会場は郡上市内外の60名以上の参加者で活気に溢れており、白山信仰への関心の高さを感じられました。

白山曼荼羅は室町時代後期の16世紀中頃につくられたものと推定されており、富山県南砺市にある上梨白山宮で近年発見されました。そこには山の麓から山頂までの美濃禅定道(美濃(岐阜県)側から白山に登拝する修験の道)と、神仏の伝承が描かれています。

その白山曼荼羅の研究者であり、石川県白山市観光文化スポーツ部文化財保護課所属の小阪 大 氏をゲストにお招きし、白山文化の謎を紐解く講座が行われました。

小阪 大 氏

白山曼荼羅
縦139cm/横47cmの和紙に描かれた白山曼荼羅は上部に白山の神仏、下部に美濃禅定道の参詣路(さんけいろ)の寺社や本地仏が描かれています。

白山曼荼羅から見えてくる修験者たちの足跡と信仰心

この曼荼羅には旧字で土地の地名や山の名称が描かれていますが、そのストーリーや神仏の紹介などは記載されておらず、絵から想像して読み解き解釈する必要があります。その不完全な説明の絵図に、白山信仰を頭と身体感覚で理解する考察の面白さがあるのではないかと、小阪氏の講演で垣間見れる「こういった考え方ができそうではないでしょうか?」「こんな読み解き方もできそうです」という言葉や楽しそうに解説をする姿から感じられました。

「ともに旅するように描かれる神仏の姿」「阿弥陀如来(あみだにょらい)からの光線を浴びる武将らしき人物」など、絵画の描写には特徴的で謎めいたものがいくつか見られます。講演では、同時期に描かれた別の絵画との共通点や寺院の由来などとも紐づけながら、まるで謎解きをするように説明されていたのが印象的でした。

現代でいう「地図の機能」と「空想の世界観」が一枚の絵となって描き表された白山曼荼羅。当時はこの絵画をもとに山頂までの参詣路を説明していたといいます。そこに描かれるメインスポットには、今も変わらない自然や寺院などの建造物の姿があり、当時から脈々と白山に感謝し、登拝を行ってきた人びとの自然との関わり方の歴史を感じられます。

現代のような移動手段や整備された道のなかった時代から熱狂的に人が登拝する白山。
今回の講座は、この土地の自然環境や白山にまつわるお寺や神社の解像度が高まるもので、時代をタイムトリップできるような感覚が彷彿され、土地の歴史を改めて感じることができました。

マニアックで難しそうなイメージがあった曼荼羅から、今住んでいる土地の文化の源流を探る。一気に深い世界へと迷い込んでしまう瞬間もありながら、今ある自然や造形物への感謝も感じられた今回の講座をきっかけに、白山信仰由来の歴史ある文化財や神仏の謎にもさらに触れてみたいと思うようになりました。

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